口臭を消す飲み物はあるの?口腔内の臭いを軽減できる仕組みとは
「ニンニクを食べたら牛乳を飲むとよい」「お茶でうがいをすると口臭予防になる」 といった噂がささやかれていますが、果たしてこれらは正しいのでしょうか。
また、牛乳やお茶以外に口臭を消すことができる飲み物はあるのでしょうか。
今回は飲み物と口臭の関係をひもときます。俗説か、本当の話か、根拠も含めて解説していきますので、「お口のニオイ」が気になる方はぜひご覧ください。
気になる口臭は飲み物で消せる?

結論から言いますと、飲み物により口臭の軽減は期待できますが、飲むものは選ぶ必要があります。
まず飲み物によって口臭を軽減できるのはなぜでしょうか。理由は大きく2つあります。
1)飲み物により口の中が乾燥するのを防ぐことができるため
口臭の多くは、口の中に残った食べ物のかす(食物残渣)や死んだ細胞などのタンパク質を歯周病菌などの細菌が分解する際に発する臭気ガス(揮発性硫黄化合物など)が原因です。
口の中が乾燥して唾液量が少なくなると、唾液による自浄・抗菌作用が低下し、臭気ガスを発生させる細菌が繁殖します。
飲み物で口の中を潤すと、唾液の分泌が促進されて口臭の軽減につながるうえ、細菌のエサになる食べかすなどの汚れや細菌そのものを洗い流す効果も期待できるのです
ただし一部の飲み物は利尿作用によって唾液の分泌をかえって低下させるため、注意が必要になります(後述)。
2)口臭を軽減する成分が含まれている飲み物があるため
一部の飲み物には、消臭効果や抗菌作用、抗酸化作用をもつ成分が含まれており、飲むだけで口臭の軽減が期待できます。緑茶に含まれるカテキンなどが代表的です。
- 合わせて読みたい
- 寝起きの口が臭くない人はいる?起床時の口臭が強くなる原因と対策
口臭を消すのに役立つ飲み物は?

前述の通り、飲み物で口臭を消すためには、「飲むものを選ぶ」必要があります。
まずは、口臭の軽減が期待できる飲み物を紹介しましょう。
水
水には飲み物による唾液分泌の促進効果、口腔内の洗浄効果を期待できます。口臭予防のためには、こまめに水を飲むのがおすすめです。
特に、食後に飲むと効果的でしょう。
緑茶・ウーロン茶・紅茶
お茶に含まれるカテキンには、細菌の増殖を抑える抗菌作用や、臭気を中和する消臭効果があります。カテキンは、特に緑茶に多く含まれます。
ただし、お茶はカフェインを多く含むため、飲みすぎには注意が必要です。飲み物に含まれるカフェイン量は後ほど説明します。
牛乳
ニンニクやニラ、ネギなどを食べると、特有の口臭や体臭が発生しますが、食前に牛乳を飲むと、牛乳のタンパク質がニンニク臭などの元となる物質「アリシン」の化学反応を防ぐため、口臭の軽減につながります。
また、臭気物質を胃の膜で包むので腸管から血液中に入るのを防ぎ、体臭および呼気の臭みを和らげられます。
ニンニクを使った料理やニラ料理、ネギを食べる前には牛乳を飲むとよいでしょう。ヨーグルトなどの乳製品にも同様の効果があります。
ココア
ココアに含まれるカカオポリフェノールには抗菌作用があり、歯周病や口臭の予防に効果的とされています。
糖分は口腔内細菌の栄養になるので、砂糖不使用のピュアココアを選び、砂糖を入れずに飲むとよいでしょう。飲みにくければ糖質ゼロの甘味料を加えましょう。
ある程度の期間継続して飲むと、歯周病菌の増殖や口臭の抑制に効果があるとされています。
りんご
リンゴジュースなど糖分を含んだ飲み物はむし歯を発生させ、口臭がひどくなる可能性がありますので注意してください。
ただし、りんごに含まれるリンゴポリフェノールにもニンニク臭などの原因となるアリシンの化学反応を防ぐ効果があります。また、りんごにはアルコールの分解を助ける成分が含まれていて、口臭の原因となるアセトアルデヒドの発生を抑制してくれます。
そのため、ニンニク料理を食べた後やお酒を飲んだ後に、リンゴを食べるのは効果的です。リンゴポリフェノールには悪臭を中和する消臭効果もあります。
野菜をかじるのと同様に、咀嚼することで唾液が分泌されるので、ある程度の汚れや細菌の付着が抑制できます。リンゴに含まれる食物繊維で口の中が綺麗になり、咀嚼により唾液も分泌され自浄作用が働きます。
また、酵素や食物繊維を多く含むパイナップルにも、リンゴと同じ口臭の抑制効果があります。大切なのは飲み物で摂取することでなくそのまま加工されていない素材を食べることです。また缶詰はシロップ漬けなどで糖質を多く含む加工をされてるのでむし歯予防の観点からもおすすめできません。
口臭を悪化させやすい飲み物は?

続いて、口臭の観点から注意が必要な飲み物を紹介しましょう。水分補給は口内の乾燥を防いで口臭を予防させる効果があります。しかし飲み物によっては、逆に口臭を悪化させる原因にもなるのです。
コーヒー
コーヒーに多く含まれる焙煎された豆の微粒子が舌のザラザラした表面に付着し、汚れとなって口臭の原因になります。コーヒーを飲んだら水で口をすすいだり、ガムをかんだりするとよいでしょう。
また、コーヒーは次のメカニズムで口臭を誘発します。
①コーヒーは弱酸性飲料のため、飲むと口の中が酸性に傾き口腔内細菌が活性化する
②多量に含まれるカフェインの利尿作用で体が脱水傾向になる⇒体の水分が失われる⇒唾液分泌量が減り口腔内が乾燥する
③空腹時に飲むとクロロゲン酸が胃酸分泌を促し、胃酸の逆流(呑酸)が生じやすくなる
コーヒーはカフェイン含有量が高い飲み物です。(下表)
脱水傾向⇒口腔内乾燥(ドライマウス)⇒口臭 という流れが生まれないように注意しましょう。
《代表的な飲み物のカフェイン含有量》 | |
---|---|
飲料 | 100ミリリットル当たりのカフェイン含有量 |
玉露 | 160ミリグラム |
コーヒー | 60ミリグラム |
エナジードリンク | 30~40ミミリグラム(一部60ミリグラムの商品あり) |
紅茶 | 30ミリグラム |
煎茶(一般的な緑茶) | 20ミリグラム |
ほうじ茶 | 10ミリグラム |
ウーロン茶 | 10ミリグラム |
※お茶やコーヒーは標準的な入れ方をした場合のカフェイン含有量
エナジードリンク
エナジードリンクにはカフェインが多く含まれるほか(表)、糖質が多く含まれます。一般的な商品で100ミリリットル当たり10グラム以上の糖質が含まれ、これは角砂糖2個分以上の量です。250ミリリットル缶を1本飲むと、角砂糖6個分を摂取している計算になります。
カフェインにより口が乾きやすくなるのに加え、糖分が口腔内細菌の増殖を招き、口臭を誘発してしまいます。
清涼飲料水(ジュース・炭酸飲料)
甘いジュースや炭酸飲料には砂糖が大量に含まれています。例えば果汁100%のオレンジジュースだと、一般的な商品で100ミリリットル当たり10グラム以上の糖質が含まれますが、これはエナジードリンクと同程度の量です。
砂糖は、むし歯菌のエサになり、細菌の増殖を招きます。臭気ガスの発生も活発になり、口臭の要因になるのです。歯の面にべたっとくっついて膜を張る(バイオフィルム)ので口腔内細菌の一種である歯周病菌や虫歯菌も増殖しやすくなるため、プラーク(歯垢)の増加や歯周病、虫歯を招きます。これらも口臭の原因です。
アルコール類
アルコールが体内で分解される際に生成される代謝物「アセトアルデヒド」が特有のアルコール臭の原因です。肺でのガス交換の際に呼気に取り込まれ、口臭の原因になります。
また、アルコールには利尿作用があり、脱水傾向⇒唾液分泌の低下⇒口内乾燥⇒口臭という流れで強い口臭を発生させます。アルコールを飲むと飲んだ以上の水分が尿として排出され、脱水状態になれば二日酔いの要因にもなります。そのため、飲酒後は飲んだアルコールの3倍の水を飲むことをおすすめします。
また、糖類を含む甘いお酒は、さらに口腔内細菌を繁殖させるため注意が必要です。
口臭を消すには飲み物だけでなくオーラルケアも大切!

前提として、飲み物による口臭の改善は一時的・補完的なものです。根本的な解決にはなりません。
一般的な口臭(※)の9割は口の中で発生し、口の中に生息する菌(口腔内細菌)がタンパク質を分解する際に発生する臭気ガスが原因です。
※一般的な口臭:病気が原因でない口臭(生理的口臭)を指します。歯周病や糖尿病など病気が原因の口臭は病的口臭と呼ばれ、病気の治療が必要なために区別しています。
細菌の栄養源となり臭気ガスの元になる食べかすなどの汚れを落とし、歯や歯周ポケット、歯間に付着する細菌と代謝物の白いかたまり「プラーク(歯垢)」を丁寧に除去するオーラルケア(口腔ケア)が口臭対策の基本になります。毎日の習慣にしましょう。
セルフケアの方法は、次の記事に詳しくまとめてあるのでぜひご覧ください。
①うがい
こまめなうがいは口臭予防に効果的です。
- 合わせて読みたい
- うがいは口臭に効果がある?臭いの原因や効果的なうがいのやり方
②歯磨き
オーラルケアの基本です。次の記事に正しい方法を解説してあります。
- 合わせて読みたい
- 歯肉炎をケア・予防する歯ブラシの使い方|歯磨きで健康な口腔内に
③舌磨き
舌ブラシを使えば簡単です。口臭の6割は舌苔から発生するとされています。ただ毎日舌をこすると傷つける可能性があるので、磨きすぎには注意してください。週に1~2回程度で充分綺麗になります。
- 合わせて読みたい
- 舌にある白いものが口臭の原因?取り方のポイントやよくある疑問
④歯間ケア
歯と歯の間もプラーク(歯垢)が溜まりやすい部分です。
- 合わせて読みたい
- デンタルフロスを使った気持ちいいお口ケアの方法&よくある疑問
加えて、定期的に歯科を受診し、自分では取るのが難しいバイオフィルムと歯石を除去しましょう。歯周病や虫歯の治療も大切です。
口臭を消す飲み物も効果的に取り入れて口臭を軽減しよう
ご紹介した通り、飲み物で口臭を軽減することは可能です。ただし一時的なものという点には留意しましょう。
飲み物の種類によっては口臭の要因になり、より口臭を悪化させる場合があるため、記事を参考に上手に選んで取り入れましょう。
口臭対策の基本は毎日のブラッシングなどのオーラルケアです。①うがい、②歯磨き、③舌磨き、④歯間ケアごとに別記事をリンクしました。それぞれ詳しい方法を解説しているので、ぜひチェックしてみてください。
口臭の原因には、加齢やストレスなどがありますが、タバコなどの嗜好品、特別な病気を除けば、最終的には口の中に生息する口腔内細菌が大きな原因です。
口腔内細菌には、口内の健康にとって良い働きをする善玉菌・悪い働きをする悪玉菌・強い方の味方をする日和見菌が混在し、互いに影響し合って一つの世界(=口腔内フローラ)を作っています。
口腔内フローラのバランスを整えることも口臭対策になりますので、紹介した内容を取り入れましょう。
- 合わせて読みたい
- 口腔内フローラを整え、口臭を予防する「クルクリン」について詳しくはこちら

監修:牧浦 倫子
大学を卒業後、口腔外科の医局に3年間在籍、その後数カ所の関連病院に出向。病院では
「抗血栓療法中患者の抜歯の管理」「糖尿病患者さんの口腔ケア」などに取り組む。病院退職後、父の診療所を継承、現在に至る。地域の医科と連携して患者さんのサポート、口腔機能向上に努める。最近は歯科の観点からの栄養指導も取り組み始めている。