歯肉炎をケア・予防する歯ブラシの使い方|歯磨きで健康な口腔内に
「歯茎(はぐき)が赤みを帯びている」「歯を磨くと出血する」「歯茎が浸みる、痛い」などの症状はありませんか?
もしかすると、歯周病(※)の初期段階「歯肉炎」かもしれません。
歯肉炎を放置して炎症が歯槽骨や歯根膜、セメント質などの歯周組織全体に広がると「歯周炎(歯槽膿漏)」へと進行します。歯周炎は適切な歯周病ケアや治療をしないと、歯のぐらつき、歯肉の出血や膿、痛み、口臭などを引き起こし、最終的には歯を失う可能性もある怖い病気です。
症状が悪化する前に一度、歯科医院を受診する必要があるでしょう。歯肉炎の段階であれば、歯磨きなどのホームケア、歯科でのプラーク(歯垢)除去・歯石除去などのプロのケアにより早期に治る状態です。
特に、毎日の歯磨きが重要になるため、歯ブラシの使い方、ブラッシングの方法などのセルフケアを詳しく紹介します。
この記事を読んで、しっかりと歯周病対策とプラークコントロールに取り組みましょう。
※歯周病は歯肉炎と歯周炎(歯槽膿漏)の総称です。
歯肉炎のケアで大切なこと
歯肉炎は、歯周病菌の感染が原因で生じる歯茎(歯肉)の慢性的な炎症です。歯肉炎のケアで大切なのは、①プラーク(歯垢)をしっかり落とすこと、②歯肉の健康を保つことの2つです。
プラーク(歯垢)を落とす
歯に付着する白色または黄白色でネバネバしたペースト状の「プラーク(歯垢)」は、歯周病菌などの口腔内細菌のかたまりです。プラークは、歯と歯肉の境目にある溝や歯と歯の隙間に溜まりやすく、放置すると歯周病菌が歯肉に感染して炎症を起こします。
歯肉炎が生じると、歯肉が腫れて溝が深くなり、ますますプラークが溜まりやすくなります。これが歯周ポケットです。炎症が進むと歯と歯肉の結合組織が破壊され、溝はさらに深くなります。
歯肉炎のケアで大切なのは、毎日の歯磨きで歯と歯肉の境目などのプラークをきちんと取り除くことです。
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歯茎をマッサージする
歯茎(歯肉)マッサージは、歯肉の血行促進や緊張緩和、歯周ポケットの浄化(プラークが押し出される)などにより歯肉の健康を維持し、歯肉炎を予防するのに効果的です。
毎日の歯磨きの際、やわらかい歯ブラシを歯茎に当てて軽く上下に動かしたり、円を描くように動かしたりして、やさしくマッサージします。
清潔な人差し指の腹でやさしく歯茎をなでるマッサージも効果的です。各部位を2~3回、全体で数十秒程度、歯茎を刺激するように行います。くれぐれも力の入れすぎに注意してください。
歯肉炎をケア&予防する歯ブラシのやり方
続いて、歯肉炎を予防し悪化を防ぐのに効果的な歯磨きの方法を解説します。
歯ブラシの選び方
歯茎(歯肉)の腫れが気にならない方は「ふつう」、腫れが気になる方や知覚過敏がある方は「やわらかめ」の歯ブラシを使いましょう。
毛先にある程度の硬さがあるほうがプラークを取り除きやすくなりますが、歯肉が腫れて弱っている方、出血がある方は歯肉を傷つくのを防ぐために、毛先がやわらかい歯ブラシを使うのが適しています。
毛先は細いほうが歯周ポケットや歯間の汚れを取りやすいですが、歯の表面(歯面)の汚れは落としにくくなります。歯肉が腫れている方、歯周ポケットが深い方(3mm以上)は細毛・極細毛などの毛先が細い歯ブラシを使うとよいでしょう。歯周ポケットの深さは歯科医院で測定できます。
ヘッドは少し小さめで薄いほうが奥歯まで届きやすく、また角度を変えて磨きやすいという特徴があります。薄型、コンパクトヘッドなどの製品が多く市販されています。
このほか、歯間ケアも重要です。デンタルフロス、歯間ブラシなども用意しましょう。歯間ケアについては次の記事をご覧ください。
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歯ブラシの持ち方
歯ブラシは、余分な力が入りにくいペングリップで柄(ハンドル)を持ち、意識してやさしい力で磨きます。ペングリップの持ち手は次のイラストの通りです。鉛筆のように持ちます。
磨き方
「スクラビング法」「バス法」などを使い分けながら、歯の表面、歯周ポケットのプラークを落としていきます。
①スクラビング法
歯ブラシの毛先を歯の表面に対して「直角」に軽く当てて、弱い力で横に小刻みに動かす方法です。歯と歯の間にも毛先を入れて同様に磨きます。歯の表面、歯と歯の間、歯と歯茎の溝のプラークを除去するのに効果的です。
②バス法
歯ブラシの毛先を歯と歯茎の境目に「45度」の角度で軽く当てて、弱い力で横に振動させる方法です。やわらかめで毛先の細い歯ブラシが適しています。
その他、ヘッドで円を描くように動かす方法などもあります。さまざまな方法を駆使して磨き残しのないようにプラークを除去してきましょう。奥歯の噛み合わせ部分、歯と歯の間、歯と歯肉の間、歯の裏側、歯並びの悪い部分などが特に磨き残しやすい部分です。
なお、やさしい力であれば、腫れている箇所や出血している箇所も磨いて問題ありません。歯磨きの際の出血はよくあることです。出血を気にするよりも、プラークを残さないようにするほうが重要です。
- 歯磨きの効果を高めるポイント
- 歯ブラシ選びや歯の磨き方だけでなく、歯磨き粉選びも重要です。
歯肉炎対策用の歯磨き粉、抗炎症成分や殺菌成分などが入った歯磨き粉を使用すると、歯肉炎の予防が期待できます。
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歯磨きの頻度
少なくとも1日に2回以上を目安とし、食後や就寝前に歯磨きをしましょう。時間がなければ、食べ物のカスを除去するために口をすすぐ、軽くブラッシングするだけでも取り組むといいでしょう。
また、プラークは粘着性が高いため、少し磨いただけでは落ちません。1日1回は5分以上かけて、1か所当たり10~20回くらい歯ブラシを動かし、隅々まで丁寧に磨きましょう。
歯ブラシを上手に使った歯肉炎対策は歯周病予防の第一歩
お口の健康維持には毎日の歯磨きが必要です。歯磨きの基本は、歯ブラシを使ったブラッシング。歯ブラシを上手に使えば、歯や歯周ポケットのプラーク(歯垢)をきれいに除去したり、マッサージで歯肉を丈夫にしたりできます。
歯ブラシでのケアに加えて、さらに口腔内のケアを意識したい方は歯磨き粉も工夫してみませんか?
歯肉炎・歯周炎を引き起こす歯周病菌は、口の中に常在する口腔内細菌で、歯磨きにより増殖を抑える必要はありますが、ゼロにすることはできません。
口腔内細菌にはさまざまな種類があり、歯周病菌のような「悪玉菌」もいれば、有益な働きをする「善玉菌」、普段は無害な「日和見菌」もいて、それぞれがバランスを取りながら「細菌たちの世界(口腔内フローラ)」を作っています。「善玉菌」「日和見菌」「悪玉菌」のバランスを良好に保つことが重要なのです。
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監修:角田 智之
1992年、明海大学歯学部卒業。日本大学板橋病院、社会保険横浜中央病院、久留米大学病院、(医)高邦会高木病院歯科口腔外科を経て、2008年福岡市博多区につのだ歯科口腔クリニックを開設。2015年同じ博多区内で移転開設し、つのだデンタルケアクリニックに名称変更。予防診療と舌痛症のメンタルカウンセリングを行っている。専門分野は口腔外科、歯科心身症。