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歯周病になぜなるの?直接的な原因や進行したときの症状、予防方法

目次

歯周病とむし歯(う蝕)は口の2大疾患です。両者で日本人が歯を失う原因の約65%。歯周病で失われる歯は全体の37.1%で、むし歯の29.2%を上回っています(全国抜歯原因調査/2018年)。

しかも歯周病の罹患率は高く、成人の半数近くが歯周病を患っているとされています(歯科疾患実態調査/2022年)。

これほど重要な疾患でありながら、歯周病に関する理解が進んでいるとはいえません。重度になるまで自覚症状に乏しく、進行が長期にわたることも関係していると考えられます。

歯周病の進行は緩やかですが、放置すると怖い病気です。ぜひ歯周病の成り立ちや発症、進行や症状について理解を深め、初期の段階で適切なケアを行いましょう。

歯周病とはどのような病気?


歯周病は、人類が太古の昔から患ってきた歯周病原菌(歯周病原菌)による感染症です。唾液を通じて人から人へとうつります。歯周病菌を持つ人は非常に多く、ギネスブックにも「世界で最も一般にまん延している感染症」として登録されています。

歯周病原菌は一度定着すると常在化してしまうため、口腔内から除去することは困難です。歯周病菌が生息すると必ず歯周病になるわけではありませんが、ある条件が重なると、歯周病菌は歯周組織(歯を支える靱帯や骨)に炎症を引き起こし、組織を破壊していきます。

後ほど説明しますが、歯肉に限局して炎症が起こるものを「歯肉炎」、歯周病による炎症が歯周組織まで拡大したものを「歯周炎」と呼び、いずれも「歯周病」に当たります。歯肉炎は軽度の歯周病、歯周炎は中等度以上の歯周病で、歯を支える骨が溶け、血や膿(うみ)が出る状態まで悪化した重度の歯周炎は「歯槽膿漏(しそうのうろう)」とも呼ばれます。

歯周病によるダメージで失われた歯茎や歯周組織は回復しません。一度、進んでしまうと元に戻せない怖い病気なのです。

歯周病になぜなるの?


口の中に生息する歯周病原菌は、普段は炎症を起こしません。

しかし、(1)歯垢(プラーク)が歯と歯茎の境目に溜まる、(2)歯茎が弱っている、(3)免疫力が低下している、などの条件が重なると歯茎、続いて歯周組織に炎症を起こします。

歯周病の直接的な原因:プラーク

歯周病の直接的な原因は、歯やその周囲に付着する乳白色・黄白色の粘着物「プラーク」です。

プラークは口の中の常在菌とその産生物からなる付着物で、1グラム当たり1000億個もの細菌が含まれます。多数の歯周病菌も含まれており、プラークが溜まった部分は炎症を引き起こしやすくなるのです。

プラークは放置すると、細菌が増殖していきます。歯のケアによりプラークを除去することの重要性がわかるでしょう。


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歯周病の間接的な原因

上述の通り、歯周病の直接的な原因はプラーク内での歯周病菌の繁殖ですが、間接的な要因として細菌が繁殖しやすい口内環境になっているという背景もあります。いわばリスクファクター(危険因子)です。

次の因子があると、歯周病になりやすくなります

●因子 1:喫煙習慣
タバコを吸う人は吸わない人に比べて歯周病になりやすく、進行も速くなります。タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させるため、歯茎の血行が悪くなり、栄養や酸素が行き渡らなくなって歯茎の組織を弱めるのです。また、血流が悪くなることで白血球やリンパ球などの働きも低下し免疫も弱くなります。

●因子2: 歯ぎしり・食いしばりの癖
就寝中に歯を強い力ですり合わせる「歯ぎしり」、強く噛みしめる「食いしばり」の癖があると、歯や歯茎に大きな負担がかかります。その結果、歯茎の組織が脆弱(ぜいじゃく)になり、歯周病にかかりやすくなるのです。歯ぎしりや食いしばりにはストレスも関与しているとされています。

●因子3:歯並びが悪い
歯並びが悪いと、溝の部分にプラークが溜まりやすくなります。また、磨き残しも発生しやすいため、歯周病が起こりやすくなるのです。親知らずや詰め物がある箇所にも炎症がよく発生します。

●因子4:糖尿病
糖尿病の人は2倍以上も歯周病にかかりやすいとされています。糖尿病の人が歯周病になりやすい理由は次の通りです。


糖尿病の人が歯周病になりやすい理由
・高血糖になると唾液分泌量が減り、口の中が乾きやすくなる
→唾液による抗菌・洗浄効果が低くなる

・唾液などの糖分濃度が高くなる
→糖は細菌の栄養になる

・高血糖になると血液中の白血球の働きが低下する
→歯茎の免疫力が低下する

・高血糖による代謝の変化、血行の阻害
→歯茎の組織が脆弱化する

このほか、歯周病菌やその毒素、炎症反応性物質が歯茎の血管から全身に入り込むことで、歯周病自体が糖尿病発生のリスクファクターになることも知られています。

歯周病が進行するとどうなる?

歯周病は放置すると進行していき、最終的には歯を失います。歯周病が進行するプロセスについて解説しましょう。


ステージ1.歯肉炎になる

歯と歯茎の間の溝に歯垢(プラーク)が溜まり、歯茎(≒歯肉)に炎症を起こします。炎症は軽度で歯肉にとどまり、歯周組織までには広がっていません。炎症により歯と歯肉の結合組織が徐々に壊れて歯周ポケット(※)が作られ、深くなっていきます。

※歯周ポケット:歯と歯肉の間の溝がプラークによって深くなったもの。健康な状態なら溝の深さは1~2mm未満です。

この段階では歯肉が赤みを帯びる程度で自覚症状はありませんが、歯磨きの際に出血することがあります。

ステージ2.歯周ポケットが深くなる

歯周ポケットの溝が深くなり(3mm程度)、新たに溜まったプラークによって内部が密閉され、空気が届きにくくなります。歯周病菌の多くは空気を嫌う嫌気性菌のため、繁殖に都合のよい環境です。歯周ポケットの内部で歯周病菌が増殖し、歯肉にダメージを与え、炎症がさらに広がります。

歯周ポケットの底のほうのプラークは石灰化し「歯石(しせき)」になります。歯石は固く、歯磨きなどのセルフケアで取ることは困難です。

歯石の表面はザラザラしているため、プラークが付着しやすく、時間がたつにつれて大きくなって歯周ポケットを広げていきます。プラークが歯石化する期間はおおむね1~2週間です。

また、炎症が歯肉を超えて歯周組織に広がり、歯と歯茎をつなぐ歯根膜(歯周靱帯)、歯茎の土台となる歯槽骨が溶けるように破壊され始めます。


歯肉は赤く腫れますが、この段階ではまだ歯磨きをすると出血する程度で、痛みはほとんどありません。歯茎が少し下がったように感じます。

ステージ3.歯茎の炎症が広がる

炎症による歯周組織の破壊が進み、歯槽骨が溶け始めます。歯周ポケットの深さは4~5mm程度です。歯茎が下がる、歯の隙間に食べ物が詰まりやすくなる、出血する、歯が少しぐらつくなどの自覚症状が出ます。口臭も出始めます。

ステージ4.歯がグラグラしだす

歯槽骨の破壊が進み、歯がグラグラして、抜ける歯が出始めます。歯周ポケットの深さは5mm以上です。出血に加え、歯茎から膿が出るようになり、「歯槽膿漏」と呼ばれる状態になります。

また、歯周病菌やその毒素、炎症反応性物質が歯茎の血管から全身を巡り、動脈硬化や内臓疾患などの全身疾患のリスクファクターとなるのもこの時期です。痛みで食事も難渋し、口臭もきつくなります。

歯周病を予防するには?


歯肉や歯周組織の破壊は一度進んでしまうと、元に戻りません。発生の予防、進行を止めるケアが必要ですので、ここで具体的な対策方法を見ていきましょう。

毎日丁寧に歯磨きを行う

歯周病の原因はプラークです。歯と歯の間や歯茎の境目まで、磨き残しがないように時間をかけて丁寧にブラッシングしましょう。

歯のざらつきやねばつきは食べ物のカスやプラークなので、磨いて取り除きます。歯と歯の間の汚れやプラークも、デンタルフロスや歯間ブラシなど使って除去することが大切です。時間が経つと、プラークは唾液の影響で石灰化し歯石になります。歯石は歯ブラシでは除去出来ません。プラークは食事後、15分程度で蓄積されるので食後に歯ブラシを当てる事や、出先で歯ブラシができない場合は、水でうがいをするなど口の中に食物残渣が少ない状況を作りましょう。


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規則正しい生活を送る・生活習慣を改善する

睡眠不足や疲労、ストレスが蓄積すると免疫力が低下し、歯周病が発生しやすくなります。規則正しい生活を送って睡眠時間や休息を確保し、運動習慣を身に付けるなど、生活を改善しましょう。余暇の充実も大切です。

栄養バランスの偏り、メタボリックシンドローム、喫煙なども歯周病のリスクファクターのため、改善が必要です。

歯科医院で定期検診を受ける

歯科医院で定期的に検診を受け、磨き残しや歯石、歯周ポケットの状態などを確認しましょう。歯周病予防には、プラーク除去や歯石除去などのクリーニング、ブラッシングや歯間ケアなどの指導が効果的です。

また、歯周病になっていれば歯周病治療も必要になります。

歯周病対策は口腔内フローラからから

歯周病菌は多くの方が持っていて、口の中の常在菌といってもよい存在ですが、歯周病(初期の歯周炎)になるかならないかは、日頃のケアで差がつきます。ブラッシングや歯間ケアなどのオーラルケアが重要であり、生活リズムや食生活などの生活習慣を整えることも大切です。

加えて、口の中の常在菌は700種類もあり、1000億個以上が生息しています。この細菌たちは互いに影響し合って「口腔内フローラ」という独自の世界を作っており、近年研究が進んでいます。

歯周病菌などの悪玉菌をゼロにするのは困難で、それよりも悪玉菌の増殖を抑え、善玉菌・日和見菌・悪玉菌のバランスを良好に保つことが重要です。そのため、毎日のブラッシングなどのオーラルケアが大切になります。

適切なオーラルケアと生活習慣で、口内環境を健康に保ちましょう。


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監修:鈴木 遼介

歯科医師として、都内の医科と歯科の連携クリニックで勤務し、患者様の要望に沿う一般診療やインプラント治療などを主に行っている。レノプロジェクト(株)の腎機能検査、Dental Prediction(株)パートナーであり、AR技術を活用し、より安心安全な歯科治療を目指している。

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運営:サラヤ株式会社

SARAYAは、1952年に日本で初めて「薬用石けん液」を開発し、感染対策に取り組んできた医薬品メーカーです。人類最大の感染症と言われる「歯周病」の対策は、健康な社会を実現するための重要な課題と考え、オーラルケアの研究を進めています。