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歯槽膿漏とは?主な原因や症状、歯槽膿漏になるのを防ぐ対策

目次

歯槽膿漏(しそうのうろう)という言葉をご存じでしょうか。

歯槽とは、上下の顎(あご)の骨にある、歯の根っこがはまるくぼみを指し、膿漏は膿(うみ)が漏れるという意味です。文字通り解釈すると「歯の根っこがはまるくぼみから膿が出ること」になります。かなりインパクトのある言葉ですが、なぜそんな状態が起こるのでしょうか。

今回は、歯槽膿漏を掘り下げて解説します。

歯槽膿漏とはどのような病気?



日本で「歯槽膿漏」という言葉が使われ始めたのは明治時代からとされています。「歯がぐらぐらし、歯茎(歯肉)から膿が出て口臭がきつくなり、ついには歯が次々抜けていく怖い病気」として恐れられていました。

歯槽膿漏そのものは古くからある病気で、古代エジプトのミイラにも痕跡が多く見られたほどです 。

しかし歯槽膿漏という言葉は現在、医療分野ではあまり使われなくなっています。1920年代のアメリカで「歯周病」という考え方が提唱され 、日本でも1960年代頃から徐々に「歯周病」が使われるようになりました 。

今では『広辞苑』にも「歯周病の旧称」と書かれるほどですが 、高齢者には「歯槽膿漏」の方がなじみ深いかもしれません。

ただし、歯槽膿漏=歯周病ではありません。まずは歯槽膿漏の病態から説明していきます。

歯槽膿漏とは?

歯槽膿漏は、現代の考え方に当てはめれば「より進行した歯周病」「重症度の高い歯周病」になります。

歯周病とは、歯と歯茎の境目の深くなった溝(病的ポケット)から細菌が侵入し、細菌の産生する毒素が歯茎に炎症を起こし(歯肉炎)、次第に歯を支える骨(歯槽骨)や靱帯などの歯周組織を溶かしていき(歯周炎)、歯をグラグラにする疾患です 。

歯周病は図のような進行段階に分かれます。初期段階では自覚症状すらありませんが、放置すると歯が抜ける可能性もある怖い病気です。実際、日本人が歯を失う原因の約4割は歯周病で、虫歯よりも多くなっています。



歯槽膿漏を上図の「歯周病の進行度」に当てはめると、様々な見方はありますが「中度歯周病~重度歯周病」あたりに該当するでしょう。歯がグラつくだけでなく、膿が出るのも重要なポイントです。

歯茎や歯を支える組織は、一度失われると移植などの特殊な治療法を取らない限り再生しません。元に戻らないのが歯周病の怖いところで、歯槽膿漏の状態まで悪化すると治療は難しく時間がかかります。結局、進行を止められず、歯を失うケースもあるのです。

歯槽膿漏の主な原因

口腔内の清掃状態が悪いなど口腔内の環境が乱れていると、歯の表面に歯垢(プラーク)が形成されます。歯垢は、黄白色のペースト状の物体で、中身は細菌とその代謝物のかたまりです。透明で表面がヌルヌルしているため、基本的にブラッシングでは落ちません。

歯垢には、歯周病の原因になる細菌(歯周病菌)が大量に含まれており、歯と歯茎の境目の溝に歯垢が残ったままになると、歯周病菌が産生する毒素が歯茎を徐々に破壊していきます。溝(ポケット)が深くなって歯周ポケットをつくり、そのポケットの中に歯垢が溜まると、家でするような通常のブラッシングで除去するのは困難です。

歯周ポケット内では歯周病菌がさらに増殖し、歯周病菌が産出する毒素が歯を支える骨(歯槽骨)や周囲の組織を破壊し溶かしています。歯がグラつき、歯槽に膿が溜まるほど進行した状態が「歯槽膿漏」です。

歯槽膿漏の主な症状



歯槽膿漏は歯周病が進行した状態です。歯茎の炎症や破壊により歯茎が下がるといった比較的初期の歯周病に見られる症状に加え、次のような症状が見られます。

歯茎から出血する

出血は初期の歯周病でも見られますが、歯槽膿漏まで進むと、軽くブラッシングングをしたり、物を食べたりしただけで歯茎から血が出るようになります。さらに重度になると何もしなくても自然に歯茎から血が出るようになり、唾液に血が混じって頻繁に血の味を感じるようになるようです。

歯茎から膿が出る

「膿漏」という言葉どおり、歯槽膿漏まで歯周病が進むと、歯の周囲の組織に膿が溜まり歯茎から漏れ出るようになります。特に歯周ポケットの奥深い部分の化膿が原因です。

重度になると、歯茎の内部に膿が溜まり、漏れ出る膿の量も増えて口の中に苦みを感じるほか、口から強い臭気を発するようになります。

口臭がきつくなる

口臭は、歯垢の中の歯周病菌が代謝により硫化水素やメチルメルカプタンなどの臭気ガスを発生することが主な原因です。「腐った卵・魚・玉ねぎ」「生ごみ」のようなにおいを発します。歯周病では歯周ポケットに歯垢が溜まっているため、このような口臭を伴うことが多いです。

そのうえ歯槽膿漏になると、歯茎の内部に溜まる膿の臭気が加わり、強烈な悪臭を放つようになります。

歯がぐらつく

歯槽膿漏は、歯茎だけではなく歯槽骨や靱帯などの歯を支える組織(歯周組織)の破壊が進んだ状態であり、進行すればするほど歯がグラグラしてきます。さらに歯周組織の破壊が進めば、歯は抜けてしまいます。

歯槽膿漏を予防するには?



歯槽膿漏まで歯周病が進むと、歯みがきなどのセルフケアだけで改善させることは困難です。歯茎から血や膿が出る、歯がグラグラするなどの症状があると、歯槽膿漏がかなり進行している可能性があります。そのような症状が出る前に定期的に歯科医院を受診をする習慣をつけましょう

前述の通り、一度失われた歯茎の組織(歯周組織)は自然に再生しません。しかし歯周病の進行を止めるためには、受診時の治療に加えて、毎日の適切なセルフケアが大切です。歯科医院で正しいセルフケアの方法を教えてもらいましょう。

また、歯槽膿漏まで進行しないよう、予防が非常に重要です。歯周病を防ぐ、もしくは歯周病を初期の段階でとどめるためにも、定期的な歯科医院のメンテナンスを受けましょう。毎日の歯磨きや歯間ケアなどのセルフケアも欠かさず行ってください。

正しく歯を磨く

歯磨きは、セルフケアの基本です。ただし適切な方法で行わないと、いくら長い時間をかけて丁寧に磨いても十分な効果を発揮しません。歯周病予防のための「正しい歯磨きの方法」を習得しましょう。


「正しい歯磨き」のポイント
・ 磨く箇所に合わせて磨き方や歯ブラシを使い分けましょう
・ 歯と歯茎の間の溝に歯ブラシを斜め45度に当て小刻みに動かします
・ 歯と歯の間(歯間)を磨く際は、歯ブラシを歯面に垂直に当て細かく横に振動させます
・ 歯と歯の間は歯間ブラシを使いましょう(ドラッグストアや薬局の歯間ブラシではプラークが落ちないため、適切な歯間ブラシを歯科医院で尋ねてください)」
・ 出血部位は組織の損傷を防ぐため、やわらかい歯ブラシを使うことがあります(ただし、やわらかい歯ブラシを使うことで弊害もあるため、やわらかさの程度については歯科医院で相談してください)
・ 歯磨き粉は歯周病予防に特化したものを使用するのがおすすめです

「正しい歯磨きの方法」について詳しくは、次の記事をご覧ください。


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歯肉炎をケア・予防する歯ブラシの使い方|歯磨きで健康な口腔内に

生活習慣を見直す

疲れやストレス、タバコは、血流の悪化・免疫の低下につながり、歯周病の進行を早めます。歯周病の予防には、生活の改善が必要です。

栄養不足も歯茎に悪影響をもたらします。粘膜を保護し、細胞の成長を促進するビタミンB2や、血行を促進するビタミンE、抵抗力を高めるビタミンCなどは歯茎の健康に有効な成分です。これらの栄養素を偏りなく摂取してください。バランスの良い食事を心がけましょう。

また、過度な飲酒、睡眠不足、不規則な生活は全身の免疫力を低下させます。歯茎の炎症を進行させる要因になるので避けましょう。糖尿病などの全身疾患も歯周病のリスクになります。

健康的な生活を送ることが、歯周病および歯槽膿漏の予防になります。

定期的に歯のクリーニングや検診を受ける

歯槽膿漏になる前から定期的に歯科医院を受診し、歯科検診や専門的なメンテナンスを受けましょう。歯周病の発生や進行を防ぐには、歯垢や歯石を除去するクリーニングが欠かせません。歯石や歯周ポケットの奥深くに溜まった歯垢は自分で取ることは困難なため、歯科医師や歯科衛生士に除去してもらいましょう。

歯槽膿漏まで歯周病が進んだら、専門的な治療が必要なため、出血・口臭・口の中のねばつきなどの予兆があれば必ず歯科医を受診してください。

歯槽膿漏の原因と予防法を知ったら早めの対策を

今回の記事で、歯槽膿漏とは歯周病が悪化した状態であると解説してきました。歯周病の原因は歯垢(プラーク)であり、歯槽膿漏の原因は歯周病の進行です。

歯周病の発症や進行を止めるには、毎日の歯磨きや歯間ケアによる歯垢の除去が重要になります。また、歯垢は、口の中に生息する細菌(口腔内細菌)のかたまりです。口腔内の食べかすや汚れを除去すれば、細菌の繁殖が抑制できて、新たな歯垢の発生や歯垢の増大を防げます。

歯磨きや歯間ケアは二重の意味で重要だといえます。紹介した「正しい歯磨き方法」を参考に、対策を進めましょう。

なお、口腔内細菌は、歯周病菌など健康に悪影響をもたらす「悪玉菌」のほかに、「日和見菌」「善玉菌」に分類される細菌も生息していて、互いにバランスを取って生息しています。口腔内細菌のバランスを整えることが歯周病対策に繋がるので、毎日のセルフケアに取り入れることもおすすめです。


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監修:牧浦 倫子

大学を卒業後、口腔外科の医局に3年間在籍、その後数カ所の関連病院に出向。病院では
「抗血栓療法中患者の抜歯の管理」「糖尿病患者さんの口腔ケア」などに取り組む。病院退職後、父の診療所を継承、現在に至る。地域の医科と連携して患者さんのサポート、口腔機能向上に努める。最近は歯科の観点からの栄養指導も取り組み始めている。

  • サラヤの歯周病研究

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運営:サラヤ株式会社

SARAYAは、1952年に日本で初めて「薬用石けん液」を開発し、感染対策に取り組んできた医薬品メーカーです。人類最大の感染症と言われる「歯周病」の対策は、健康な社会を実現するための重要な課題と考え、オーラルケアの研究を進めています。